希少な天然植物エキス「ピクノジェノール®」とは?
小林製薬×ホーファー・リサーチ社インタビュー
小林製薬では、血流改善効果や抗酸化作用をはじめ、様々な効能を持つ天然エキス「ピクノジェノール®」に注目しています。
このピクノジェノール、実はフランス海岸松の樹皮1,000キログラムから1キログラムしか作れない、非常に希少な成分です。
スイスに本社を構えるホーファー・リサーチ社がその効能や安全性を50年以上にわたって研究し、医薬品や健康食品の原料として世界中に供給しています。
数多くの臨床試験にもとづくデータを持つ同社と小林製薬はパートナーシップを結び、お困り事を抱える方々を応援してきました。
今回はホーファー・リサーチ社の皆様にインタビューをし、ピクノジェノールについて詳しくお話しいただきました。
天然植物エキス「ピクノジェノール®」研究の大家、ホーファー・リサーチ社
ホーファー・リサーチ社 最高執行役員代表取締役社長
ビクター・フェラーリ氏
――本日はよろしくお願いします。まず、ホーファー・リサーチ社様の事業内容についてご紹介ください。
フェラーリ社長:ホーファー・リサーチ社は、「毎日を健康に生きる」ことをテーマとし、天然由来で安全性が高く、健康維持の基礎を築くことができる希少成分ピクノジェノール®について研究開発をしている会社です。
当社の始まりは、1925年にドイツのベルリンで設立された製薬会社でした。第二次世界大戦後に残った医薬品の商標登録を1970年代に別の製薬会社へ売却し、現在の「Horphag Research(ホーファー・リサーチ)」という社名へ変わりました。
ピクノジェノールを扱い始めたのは、1960年代です。ピクノジェノールはフランス海岸松の樹皮由来の抽出物で、天然由来の抗酸化成分が豊富に含まれています。
当時の会長だったチャールズ・ハイモフがこのピクノジェノールを原料とする医薬品の開発事業を開始しました。
――ピクノジェノールは、どのような成分でしょうか?
フェラーリ社長:ピクノジェノールには、ポリフェノール類である「プロシアニジン」を豊富に含んでおり、高い抗酸化作用、抗炎症作用や血行を良くする働きがあります。
当時から50年以上が経ち、研究の技術や精度が上がった現在、ピクノジェノールの効能に関する研究成果は多岐にわたりますが、そのベースが血流改善であることは変わりません。
もともとは医薬品目的の原料としてのみ販売していましたが、現在は健康食品にもピクノジェノールが使われています。
――本日は、ホーファー・リサーチ社から研究者の皆様にもご参加いただいています。ご紹介いただけますか?
ストロング博士:ホーファー・リサーチの日本代表兼アジア太平洋地域学術担当ディレクターを担当しています、ジェフリー・マイケル・ストロングと申します。今日はアジア太平洋区域の副社長、ケネス・タンもともに参加しています。
ホッガー博士:ペトラ・ホッガーと申します。ドイツのバイエルン州にあるヴュルツブルク大学で、臨床薬学の教授として研究と学生への指導を行っています。ホーファー・リサーチでは20年ほど研究開発に取り組んできました。
写真左:ホッガー博士 / 写真右:ヴァイヒマン博士
ヴァイヒマン博士:私はフランツィスカ・ヴァイヒマンと申します。ドイツで生化学と分子生化学を学び、レーゲンスブルク大学で分子生物学の博士号を取得しました。
ホーファー・リサーチに入社したのは4年前です。科学コミュニケーターとして、当社が扱う原料関連の研究やデータについて発表を行ったり、記事を執筆したりしています。
厚い樹皮に蓄えられた、豊富なポリフェノールによる抗酸化効果
ピクノジェノールが抽出されるフランス海岸松
――つづいて、ピクノジェノールが抽出できるフランス海岸松についてお聞かせください。
ストロング博士:ピクノジェノールは、フランス西南部のボルドー地方とビアリッツ地方の間にある、ヨーロッパ最大の森に生える松の樹皮から採収・抽出しています。
この植林地ができたのは、ナポレオン3世(1808~1873年)の時代で、その前は海水と内陸の水が混じり合う沼地だったそうです。
何百年も海水があったためミネラルの含有量が高く、植物が生えない環境だったのですが、土地開発のために水をよく吸う松が植えられたことで水位が下がり、250万ヘクタールもの広大な森に成長しました。
――ピクノジェノールにポリフェノールが多く含まれているのは、森の環境と関わりがあるそうですね。
ストロング博士:はい。この森がある地域は年間300日以上も太陽が出ていて、紫外線が強く、夜と朝の寒暖差が非常に大きいという環境です。
こうした過酷な環境のため、松の木は紫外線や虫から自分の身を守ろうと、より多くのポリフェノールを生成し、樹皮が赤くなっています。
ピクノジェノールが抽出できるフランス海岸松の樹皮
そのためこのフランス海岸松は他の松と比べて樹皮が3~4センチと非常に厚く、200キロ南にあるスペインの海岸松の2倍ほどの厚さです。ちなみに、日本の平均的な松は厚さ1cmと言われています。
――その特殊な松からピクノジェノールが発見されたのには、どのような経緯があったのでしょうか。
フェラーリ社長:1960~1970年代の木材産業や農業において、収穫時の副産物にビタミンやミネラルなどの栄養価値があるかどうかを調査する動きがありました。
何も見つからないか…と思われたときに発見されたのが、フランス海岸松の樹皮に含まれる「プロシアニジン」という抗酸化物質です。
初めはラボの試験管内で、抗酸化効果・抗炎症効果から、コラーゲンやタンパク質結合効果まで測定が進み、その後、臨床でも同じ効果が確認されました。
また、ユニークな働きとして、ピクノジェノールは一酸化窒素の産生をサポートする作用もあることがわかりました。一酸化窒素は、血管を拡張させ、血液の流れをスムーズにする働きをします。
血管内皮細胞という細胞内で一酸化窒素が生み出されるのですが、ピクノジェノールはeNOS(血管内皮一酸化窒素合成酵素)を活性化するので、一酸化窒素が効率よくつくられるのです。この事実は、日本の広島大学が行った研究で2007年に明らかになりました。
現在では、人工的なデータしか得られない試験管の中の研究ではなく、臨床データを求めて、ピクノジェノールを摂取した後の体内での作用を中心に研究しています。そのため、当社の研究プロジェクトは世界中で行われていますが、いずれも臨床研究が中心です。
――ホッガー博士が中心となって進めていらっしゃる研究ですね。
フェラーリ社長:ホッガー博士のような第一線で活躍する研究者がいて、当社はとても幸運だと思います。
ホッガー博士は研究方法から検討し、ピクノジェノールによる代謝物が体内で現れる場所やなくなるまでの時間、代謝物の血中濃度などを研究して論文も多く発表してきました。
それらの研究の結果、ピクノジェノールの代謝物はGLUT1輸送タンパク質の働きにより、体内で様々な組織内へのとりこみが促進されることが分かりました。これまでの臨床研究では血管内皮細胞をはじめ、赤血球や免疫細胞、関節内などにも取り込まれ、残留することが確認されています。
最近では、妊娠中の方や中高年の女性にできることが多いクモの巣状静脈瘤の治療をする過程で、ピクノジェノールを摂取すると、皮膚の色素沈着が抑制される可能性があるということも示唆されています。
安全性と品質の高さが評価されている抽出プロセス
――ピクノジェノールは、どのようなプロセスで海岸松から抽出し、医薬品や健康食品の原料になるのでしょうか。
フェラーリ社長:ピクノジェノールは、先ほどお話したフランスの森に生えている、30~50年ほど生育された海岸松の樹皮から得られます。
まず、木材として伐り出される木の副産物である樹皮を、大きさと品質によって選別し、洗浄し、工場に運んでエキスを抽出します。
ピクノジェノールの鮮度を保つために、当社の工場に樹皮が送られてくるのは、伐採から24時間以内です。量にして1日トラック10台分の樹皮が届きます。
――大量に運ばれる樹皮から、どれくらいのピクノジェノールが抽出できますか?
フェラーリ社長:ピクノジェノールのエキスは非常に貴重で、1,000キログラム(1トン)の樹皮からわずか1キログラムのエキスしか作れません。残りの樹皮999キログラムは、地域の農家さんやホームセンターに堆肥として卸しています。
――抽出プロセスについてもお聞かせください。
フェラーリ社長:当社のピクノジェノール抽出ラインは、その全体が「GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)」の認定を受けており、食品としても医薬品としても高品質で安全性の高い原料を生産しています。
GMP認定工場となるには、細菌検査や毒性検査をはじめ、さまざまな品質検査に合格する必要があります。私が社長に就任してから30年以上経ちますが、今まで一度でも異常が見つかったことはありません。
ちなみに、ピクノジェノールが得られるフランス海岸松の森は、農薬や殺虫剤が一切使用されていないので、工場でエキスを抽出する前の段階から、天然で安全性が高いといえます。
伐採1本につき、2本植える。ピクノジェノールはサステナビリティにも配慮された原料
ホーファー・リサーチ社日本代表・アジア太平洋地域学術担当ディレクター
ジェフリー・マイケル・ストロング博士
――ピクノジェノールは1,000キロの樹皮から1キロしか作れないというお話がありましたが、たくさんの樹皮を必要とすることで、木がなくなってしまうことはないのでしょうか?
ストロング博士:フランスは森林を非常に大切にしている国で、「木を1本伐採したら2本植えなくてはいけない」と法律で定められています。
そのため、伐採をしても木の数は増えますし、伐採するのは30~50年生育された木のみなので、森林が枯渇してしまうということはありません。こうしたサステナビリティの高さも、ピクノジェノールを原料とすることの魅力ですね。
フェラーリ社長:環境への配慮という点では、抽出工場も環境に優しい抽出方法を採用しています。
例えば、最初のスチーム工程では樹皮の端材をエネルギー源として蒸気を作り、タービンを回したり、エタノールと水を再度使えるようにリサイクル処理をしたりしています。
また、抽出液はフィルターでろ過をしてから下水処理するため、環境への負荷を軽減できています。
――ピクノジェノールは貴重な成分でありながら、サステナビリティを意識した方法で抽出されているのですね。